ボクが在宅介護に関わることになったいきさつ 1980年頃、近くに住む叔父が脳溢血で倒れ、完全に寝たきり老人になってしまいました。 しかし、要介護者の居る家庭の日常生活はとても大変です。 入浴させる際など、息子さんと二人がかりで、「とても危険なので、命がけでやらな」 と言ってました。 |
|
ベビーウィンチと装着ベルト |
|
介護装置作成開始 |
|
その一家を少しでも助けたい。でもボクに何が出来るだろう? まず健常者の普通の生活と要介護者のいる生活で違っている部分を具体的に知ることが重要だと思いました。 当時は介護用品も現在ほどきめ細かく用意されていないけど、車いす、お風呂の椅子、その他いろんなところに取り付けられる手すりなどは手に入れられるようでした。 半身は完全に動かず、残った半身は何とか動かすことが出来るようだけどほとんど力が入っていない様子です。 車いすを用意しても自分で乗ることが出来ないのはもちろんの事、乗せてもズルズル前にすべり落ちそうになるので車いすにベルトでくくりつけます。手すりにつかまっても自分の身体を支えることが出来ないのでほとんど意味がありません。 常識的に思いつくような介護用品では日常生活のすべてにおいて役にたたないのです。 そこで、ベビーウィンチを使って身体を持ち上げ、移動出来ないか考えてみました。
うまくいけば椅子に座ったり、ベットから車いすに移動したり、かなりの場面で介護者を助けるかもしれません。 |
|
ベビーウインチ ベビーウインチと云っても種類はさまざまです。先ず人の重さに耐えられればいいので荷重制限は100kg 〜 200kgのものを探しました。 移動速度も重要です。1秒間に1mなんてのもあり、荷物を二階や三階にあげる為に使うなら重宝すると思いますが人間をぶら下げ、まして重度の障害のある人を乗せるには動きが速すぎてとても危険です。 1秒間に20cm程度移動の物を見つけました。 |
|
それから、寝たきりの叔父をどういう風にベビーウィンチでつり上げるかを考え
ました。 すぐ思いついたのが、いつかテレビで見た、救命救助隊が、ヘリコプターから、浮き袋のようなベルトが付いたワイヤーロープを下げ、それで被災者の身体を引っかけてつり上げ救助するという やつです 早速、巾広のベルトを買ってきてそれに古毛布を切断して巻いて縫いつけ、両端にDカンと言う金具を取り付け、ベルトの先端にマジックテープを縫いつけ、それを ベビーウィンチに引っかけてボク自身や家内の身体をぶら下げてテストしてみました。 結果は思惑どおり、うまく持ち上げられました。よし、これでうまくいく! これなら叔父一家に喜んで貰えると思い、早速事情を説明したところ、快くテストする事を了解していただけました 。 |
|
脇の下あたりで身体に巻き付け胸の位置でマジックテープで止めます | |
ベビーウィンチとベルトを仲介するための金具、当初は角材で作りました | |
介護装置の設置場所に悩む |
|
ボクの家には欄間付きの鴨居(和室の鴨居の上に空間がある)があるのですが、この家のベットのある部屋にはそれがありません、つまりベビーウィンチを取り付ける場所が無いのです。 悩んだ末思いついた方法は、押入の上の戸袋を少し空けて出来た空間と、その反対側の付け鴨居が壁から2cm程出っ張っているのを利用してその間に鉄パイプを渡し、そこへ ベビーウィンチを取り付けるというやりかたです。 鉄パイプは近くの工事現場で足場などに利用されている物を交渉して分けていただきました。 とりあえず、足場用の番線で鉄パイプにベビーウインチを取り付けました。パイプの軸方向にウインチを移動させることが出来るので見栄えは悪いですが便利そうです。 |
|
いよいよテスト開始 |
|
ワクワクして、叔父の身体にベルトを装着。ベビーウィンチにベルトを取り付け昇降ボタンを押してみました。
徐々に叔父の身体が床面から上がっていきました。(昇降ボタン入り切りを調整しながら1秒間に約5cm程度の移動速度) そのままもう少しあげていくと腕が両サイドからどんどん上がっていきます。 なおも引き上げていくとまったくのバンザイ状態になってしまい浮き輪状の装着ベルトから身体がすり抜けてしま いそうです。 あわててみんなで叔父の身体を支えてしまいました。 失敗です。完全寝たきりの叔父にはこの方法だけでは通用しません。 |
|
反省会 |
|
完全に寝たきりという状態は、まさに軟体動物のような液化状態で現在の装着ベルトではその中をすり抜けてしまうのです。それは健常者でテストを繰り返しても全く気が付かない事実でした。
みんなでどこをどうすれば安全確実に叔父の身体を持ち上げることが出来るか話し合いました。 その内容は、リフトが天井に取り付けられたレールをリモコン操作で走る仕組みになっていて全体のスタイルは ボクらの作ったそれとは明らか洗練された物ですが、基本的な原理はボク達の考えた方法と同様の物でした。 肝心の障害者への装着部分はベルトを2本使ってブランコに乗った様な状態で引き上げる方法と、風呂敷状(形状)の生地で障害者を座った状態で包み込みその端の4箇所をウインチに引っかけ引き上げる方法の2つの方法が紹介されていました
。 |
|
再挑戦 |
|
ボク達のやってきたことが振り出しに戻ったわけで、一から考え直してみることにしました。 そこで新たに思いついたのが、パラシュートです 。 スカイダイビングする人が身体に付けている装着ベルトがいいのじゃないか?早速テレビのスカイダイビングシーン等を参考に考えてみました 。 現在出来ている胸の位置で浮き輪状のベルトに、お腹部分と股の部分を追加すれば何となく似てきます。 それを真似た感じになるよう布の帯や手芸用の部品を買いそろえ家内とミシンで作ってみました。 装置を装着する祭、極力手間の掛からないように、プラスティック製の接続部品やマジックテープのみで簡単に装着できるように工夫もしました 。 |
|
これにより
● 寝ている叔父の身体を少し横向きにする。 ここまでの作業が一人で3分間以内に出来るようになりました。 |
|
2回目のテスト |
|
完成したパラシュートもどきの装着ベルトで、寝たきりの叔父を持ち上げる事に挑戦しました。 今度は腕が広がったりせず、持ち上げる事には一応成功しました。 しかし、上半身が持ち上がったあたりから足がダラリと垂れ下がり本人も少し苦しそうなのです。 上半身と股の部分までは固定された状態で思惑通りの形で持ち上がったのですがその下、つまり太股から膝、足先が上半身に付いてこず床面に付いたままになってい ます。 |
|
再再挑戦 |
|
ここまで来ればもう後には引けません。後もう一歩なのですから。 楽な姿勢で格好良くもち上げるようにするには膝の部分も固定して股の部分に付いてくるようなベルトを追加しなくてはと考え再度作り直すことに しました。 気を取り直して、膝の部分の固定するベルトを作製し、腰のベルトと接続させました。 |
|
3回目のテスト |
|
今度は全体に安定した形で叔父の身体が持ち上がりました。 腰から足先までが少し前に出た形で足先まで完全に浮いた状態で叔父からも苦しい表情は見られません。 それどころか、気持ちよさそうにしていました。(床ずれ部分が楽になった事も幸いしていると思われます。) 試しにボクもそのベルト装着してつり上げてもらったのですが、自分の体重が各部に分散されているためとっても快適で、そのままの状態で眠ってしまってもいいかな?という気分になりました 。ちょっとオーバーかな(^_^;) |
|
ボクが書いた図ではゴチャゴチャしてわかりにくいですが、腰と又の部分、膝の部分まで作製出来た時の図です 。 | |
そして完成へ |
|
その後、鉄工所をやっている友人にお風呂場、トイレ、食卓テーブルにベビーウィンチを付けるための固定レールを取り付けを依頼しました。 これにより、ベットから車椅子に移動するのに奥さん一人の力で簡単に移動することができるようになり、家族みんなで食卓をかこみ一緒に楽しく食事できます。お風呂の湯船に首までつか り、洗い場でリフトに吊られたたまま椅子に座り身体を洗ってあげることもできるようになります。又健常者と同じ便器を使って用を足すことが出来るようにな るはずです。(マジックベルトで股まわりのベルト脱着が簡単だから) |
|
残念なことに叔父はそれの完成を待たずして・・・天国へ旅立ちました。 残された装置と貴重な経験をしたその思い出は今もボクが持っています。 |
|
最後まで読んで頂きありがとう御座いました。 もし、ご質問とかありましたら掲示板やメール(トップページより)でどうぞ。ボクが経験した事はお答えさせて頂きます。 |
あなたは累計 |
|
人目の訪問者です。 |
(本日は | 番目のアクセスです。 また昨日は | 人のご来場者がありました) |